院長エッセイ集 気ままに、あるがままに 本文へジャンプ

  

娘が二十歳を迎えた。

 

娘が二十歳を迎えた。その日のために振袖を新調した。かなりの出費だ。「減価償却のため、できるだけ頻回に着てもらわなければ」と考えるセコい親父にとっての救いは、彼女は2回の成人式に参加できることである。地元の中学校を卒業し、私立の中高校一貫校に進学した彼女は、中学までの仲間と高校の仲間で祝う成人式を2回出席できるのである。新調ぴかぴかの振袖。13日に私立学校での成人式には、妻(彼女の母親)に着せてもらったのだが、18日の地元での成人式には、彼女が自分で着付けをした。妻曰く、なかなか上手に着ているとのこと。娘は、着付けを学んでいる母親の影響もあり、また京都の大学に学び、和装の文化に触れる機会も多いとのことで、似合う似合わないは別として、着物に興味があるらしい。それを一番喜んでいるのは、妻の母親かも知れない。彼女は長く着物を扱う商をし、6人の孫のうち女の子はうちの娘ひとりなのだから、それも頷ける。

 

 

家族の愛情を受け、これと言った苦労もせず、のほほんと青春を謳歌する娘。それなりにお金もかかっているのだから、振袖姿が綺麗に見えない訳がない。地元の成人式では、私が教育委員をしていることもあり、特等席で式に参加させてもらったが、級友との再会に、笑顔がはじける娘の姿が眩しくも羨ましい。式に参列している親ばかたちを眺めるのもまた楽しい。世界に誇る着物文化の維持・発展のためだけではなく、とかく愛情表現が下手な両親のためにも、成人式は未来永劫、存続していって欲しいものだ。





目次へ戻る / 前のエッセイ / 次のエッセイ